ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 トランプ大統領の鶴の一声(!?)で米中関税報復合戦が再び始まることになりました。アメリカは新たに3800品目を第4弾として課税対象としそうで、これも当然報復関税の対象となるでしょう。しかし、この問題に関する報道はほぼすべてが間違っている。誰も指摘しないのも本当に不思議なのですが、主に二つ、私が指摘しておきます。

 まず第一に、米中が報復関税をかけあってから丸1年近く経ちますが、アメリカの対中貿易赤字は全く減っていません。ほぼ月200億~250億ドル、年間3千億ドルというペースには全く変化は見られません。ちなみに関税をいじっていない対日貿易赤字も年間500億~700億ドルペースで過去10年ほとんど変化がありません。

 これのどこが米中貿易戦争で、世界景気の後退なのでしょうか。データディペンデントに物事を考えるなら証拠はゼロ。つまりメディアは現場を見ずに頭でっかちに勝手なファンタジーを書いていることになります。

 もう一つ。アメリカが関税をかけるとそれはアメリカの消費者が負担することになる、という解説。これも知ったかぶりをしているとしか思えないんですよね。最終的にそうなるしかない、というのは確かでしょう。ただ、その間にも当事者はぼーっと中国から輸入を続けていることはない。エスカレートすると思えば当然、供給先を中国以外に求めます。事実、アップルはその調達先を中国からベトナムなどに大きくシフトし始めています。あの巨大企業が1年もしないうちに対応してくるわけですから、実際にはアメリカ企業の「脱中国シフト」は想像より進んでいると考えるべきでしょう。

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