政府が副業禁止から推進へ方向転換し、副業を解禁する企業も増えつつあるが、否定的な企業も未だ少なくない。副業を始めるにあたって事前に知っておきたい注意点や税金、副業のリスクなどを、税理士や弁護士の視点から考えていく。
* * *
国が副業を推進しているとはいえ、まだ副業を認めていない企業も少なくない。経団連「2018年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」によれば、副業を認めていないと回答した企業が78%で、うち、「今後も認めない」と回答した企業が約43%に上った。認めない理由は「社員の総労働時間が把握できない」「社員の健康確保が図れない」といった回答が多い。
副業推進の流れを作った厚生労働省の「柔軟な働き方に関する検討会」の委員で弁護士の荒井太一さん(39)はこう話す。
「副業を始める間に、まずは会社の就業規則を確認し、それに従って会社に届け出などを行ってから始めるほうがトラブルは少なくなります」
現実は副業を認めていない会社が多いが、荒井さんは、
「本来、労働時間以外の時間をどのように使うかは労働者の自由であって、就業規則に副業を禁止する規定があっても法的には有効ではありません」
と話す。ただ一定の範囲では禁止されるといい、18年に改定された厚生労働省のモデル就業規則にもあるように、(1)本業に支障がでる場合、(2)企業秘密が漏洩する場合、(3)会社の名誉や信用を傷つけることや企業秩序を乱す行為、(4)ライバル企業で働くなど企業の利益を害する場合──のいずれかに該当する場合は企業が禁止や制限をできる。
荒井さんによると、有給休暇を使って副業をするのも問題はないが、病気休暇を申請して休んでいる間に副業をするといった行為は企業秩序を乱すことにつながるので問題だという。
「典型的な日本型雇用は長期雇用を保障する代わりに、仕事内容も勤務地も選べず、自分のキャリアを自分で設計できないデメリットがありますが、副業には、本業では達成が難しいキャリアや自己実現をかなえられるメリットがあります」(荒井さん)
本業とは別に社会貢献活動や好きなことを究める人もいるが、副業・兼業の動機はやはり「お金」という人も少なくない。本業以外に収入を得る際に、どんな手続きが必要なのか。気をつけるべきこととは。自らも新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」のオーナーという副業を持つ税理士の高橋創さん(44)に聞いてみた。