ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 再びこの日がやってきました……。例によってメディアは追悼番組ばかり、お涙頂戴の連発ですが、あれから8年経つわけです。ちょっとは違う発想になれないものか。

 日本で、およそ万人に体験として記憶に残るものとしては、(私は生きてませんが)終戦、阪神・淡路大震災、そしてこの東北の震災ぐらいではないでしょうか。

 ご存じの通り、ぐっちーの会社は震災後本社を岩手県に移しました。どうせ法人税を払うなら、被災した岩手県に払った方がいい、と思ったのです。そして、震災1週間後に現地入りしてから、いわゆる復興事業にずっと携わってきました。その意味ではたまにしか現地を訪れないジャーナリストの人にはわからないことがよくわかるのです。

 結論から言うと、実にやばいことが進んでいます。現在進行形です。

 私たちがやったオガールプロジェクトは補助金なしに黒字化を成し遂げた日本初、唯一の公民連携プロジェクトです。当然、被災地からの視察は頻繁で、100を超える市町村の人たちを研修として受け入れてきました。我々のプロジェクトの基本は(1)高齢化は絶対に止まらない、(2)人口はどうあっても絶対に増えない──でありまして、つまり人口減少社会が大前提です。当然、復興の参考になるとばかり思っていました。

 ところが実際には、オガール型の復興施設を作ったところは大槌町たった一つ。オガールベースをモデルにホワイトベースというビジネスホテルをはじめました。バレーボール専用体育館などのキラーコンテンツはありませんが、とにもかくにも民間資金100%で立ち上がりました。

 他の被災市町村ではオガールの成功事例と経験がマッタク使われていません。それどころか、なんと、この期に及んで人口増加を前提とした復興案を提出し、莫大な補助金を政府から得て、それだけならまだしも、維持管理費をどうするのか、と言いたくなるような巨大な施設を東北中で次々と建設中なのです。

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