「団塊の世代」の名付け親で、経済企画庁(現内閣府)長官などを歴任した作家の堺屋太一(さかいや・たいち、本名:池口小太郎<いけぐち・こたろう>)さんが2月8日、多臓器不全のため東京都内の病院で死去した。83歳だった。
「次の作品として『新元号30年』。私の最後の予測小説を書いてみたいと思っているんですよ」
昨年8月31日、自民党の総裁選に関するAERAの取材のなかで、堺屋さんはそう次回作への意欲を見せていた。孫くらい年の離れた記者に「雑誌で連載できないか」と取材中に問いかけるほどだった。それも、堺屋さんが新元号になる2020年以降の日本に大きな不安を感じていたからにほかならない。
取材は総裁選に関するものだったが、それを論評することはなく、日本の政治そのものへの危機感を語っていた。
「一番の問題は、野党がいないことです。野党がいない政治には、そもそも論争が生まれない。総裁選など、コップのなかの嵐に過ぎません。これは日本にとって非常に不幸なことです。野党や反自民勢力を意識する必要がないから、政治家が大きなビジョンを描くことがなくなりました」
そして、こう続けた。
「例えば今、日本が直面している最大の問題は少子化です。これを真剣に議論する人がいない。地方から若者を吸い上げ、東京一極集中だから、少子化が見えない。今、私は渋谷区神宮前に住んでいるけど、男女のペアで歩いているのは外国人ばかり。恋もしなくなった。恋の芽生えない東京に人が集まるのだから、地方はよほど面白くないんだろうと思う」
堺屋さんは1997年に朝日新聞紙上で始めた連載の近未来小説『平成三十年』(朝日文庫)で少子化を既に予測していた。この作品は、人口が減少し、東京一極集中で地方は衰退、国の借金は増え続けるというストーリーだ。まさに、現実も小説のような世界が広がっている。単行本化した際のサブタイトルは「何もしなかった日本」。このサブタイトルについて堺屋さんに尋ねると、こう答えた。