仕事仲間との距離を縮める方法の一つ、飲み会。しかし、若手は上司の話を退屈に感じたり、一方で上司はパワハラ、セクハラにならないように気を遣ったり……と、それぞれに飲み会にネガティブなイメージを抱くことも少なくない。こうした“不幸な飲み会”はどうして生まれてしまうのか。専門家に聞いた。
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デジタルハリウッド大学の匠英一教授は、不幸な飲み会は、世代による「時間知覚のズレ」が原因だと説く。
「40代以降の人と若い人では、時間の認識に差があります。年をとると1年があっという間に感じるようになりますが、これは生理的に時間感覚が変わってくるから。同じ1分間でも、中高年は短く感じるし、若い人は長く感じます」
匠教授によると、アルコールが入ることによってこのズレがさらに大きくなる。おじさんの話が長いのも同じメカニズムだ。自分では短く話しているつもりでも、客観的には違う。
「ちょっと小言を一言と思っても、相手には長々とした説教に受け取られます。また、“頑張れよ”と一瞬肩をたたいたつもりでも、自分では気づかないうちに接触時間が長くなりがち。それがセクハラだと思われても不思議ではありません。中年以降の人は、自分の時間感覚が狂っていることを肝に銘じておきましょう」
明治大学の堀田秀吾教授は、話し手と聞き手の上下関係をなくすことが重要という。つまり、「無礼講」だ。
話し手にセクハラやパワハラをしているという意識はなくても、相手がそう受け取ればそれはハラスメントだ。堀田教授は、話し手と聞き手に職場での力関係といった社会的差異があると、その齟齬(そご)が発生しやすいと指摘する。
「発話者の意図と聞き手の受け止め方を合わせたものが、コミュニケーションです。発言の意味は『何を話すか』だけでなく、相手の受け止め方との相互作用で決まるのです」
力関係の差が薄まれば、同じ言葉や行為でも受け手がハラスメントと感じずに幸福な時間を過ごせる可能性が高まる。匠教授が簡単ですぐに実践可能なコツとして勧めるのが、「上座」を作らない座り方だ。