リーマン・ショックから今年で10年。今、大学の資産運用が変わりつつある。国内大手証券会社の営業担当は「大学の運用担当者向けのセミナーを開催すると、オルタナティブ商品に対する質問が非常に多い」と言う。
オルタナティブ商品とは、株式や債券などの伝統的な資産とは異なる金融商品。具体的にはプライベート・エクイティ・ファンドやヘッジファンド、デリバティブ(金融派生商品)などがある。リターンも高いがリスクも高い。なかでも「シリコンバレーの新興企業に投資するベンチャーキャピタルファンドなどの運用利回りは年10~20%という高さなので、大学関係者の食いつきがいい」(前出の営業担当)という。
ただし、一部の大学はかつて、オルタナティブ商品で苦い経験をしている。リーマン・ショックを受け、駒澤大学は金利スワップ・通貨スワップのデリバティブ取引で154億円もの損失を被った。慶應義塾大学も225億円もの評価損を出した。以降、積極的に資産運用する大学は減少。「大半が預貯金や国債にほぼすべての運用資産を投じている」(同)という。
だが、そうも言っていられない現状もある。大学に経営助言をするIBJの松田裕視社長が話す。
「低金利で金利収入はわずかなうえに、国債価格は日銀の金融緩和出口戦略で下がりつつある。今後、金利上昇圧力が高まれば、さらに運用パフォーマンスは低下する。一方で学生数の減少で学納金が減り、私学助成金も年々減少しているのです」
先んじて運用体制の見直しを図った大学もある。上智大学は09年に元日興アセットマネジメント社長の引間雅史氏を財務局顧問として招聘。東京理科大学は14年に東京理科大学インベストメント・マネジメントなる運用会社を設立し、ゴールドマン・サックス出身の同大OBである片寄裕市氏を代表に据えた。
「早稲田大学も昨年12月に自己資金で新しく基金を立ち上げ、元本1億ドルで運用をスタートさせています。その運用先は、従来の国債などではなくオルタナティブ商品がメイン」(松田氏)