「今季のテーマは大人。4年後のオリンピックには中身も大人になるために、今季はまず演技とか外側から大人に。私服もちょっと気をつけるようになりました(笑)。荒川静香さんのように、余裕があってお客さんまで巻き込んで表現していけるような演技を目指します」
18年世界選手権銀メダルの樋口新葉(17)は、オフの練習中に右足首を痛め、様子を見ながらのスタートだ。オータム・クラシックは5位だったが、10月の東京選手権では優勝した。
「痛みがあるなかで、自分の力をしっかり発揮できました。一試合一試合を大切に、あとは上がっていくだけです」
五輪出場を果たせず悔しい思いをした三原舞依(19)にとっては、リベンジの4年が始まっている。初戦ネーベルホルン杯では209.22点とハイスコアを出した。ジャンプの安定感も、演技の美しさも、バランスの良さが売り。GPシリーズで好成績を出し、存在感を示したい。
また拠点を米国に移した本田真凜(17)は、新しいジャンプの跳び方に取り組んでいる。すぐに成果は出ていないが、シーズン後半に向けて期待が高まる。
今季の台風の目となるのが、紀平梨花(16)だ。今季シニアデビューしたばかりだが、初戦のフリーでトリプルアクセル2本を降りて世界を驚かせた。218点台のハイスコアは、GPシリーズ開幕前の時点で、日本女子の今季最高点だ。早くもGPファイナル候補と囁かれている。
「練習で自信の持ち方を変えて、トリプルアクセルの確率も上がってきました。伊藤みどりさんのような、飛距離のある質の高いトリプルアクセルを目指したいです」
日本女子とGPファイナル出場を争うのは、五輪金メダルのアリーナ・ザギトワ(16)と銀メダルのエフゲニア・メドベージェワ(18)のロシア女子2人になりそうだ。ザギトワは五輪後も好調を維持。メドベージェワは拠点をカナダに移し、新たな練習環境のもと「スケートを楽しんでいる」と笑顔を見せる。
今季は、五輪後のシーズンで一区切りのタイミング。それぞれが新たな夢に向けて、どんな道のりを歩むのか。その変化に注目だ。(ライター・野口美恵)
※AERA 2018年10月22日号