「目配り、気配り、心配りが命。でも社員や友人に、一番助けられています」(松村さん)
ただ、自身の病名は長年、家族以外に告げることができなかった。部下たちでさえ、15年に出版された松村の伝記的な書籍『熱狂宣言』(幻冬舎)で初めて知った。
周囲に心配をかけたくなかったのに加え、07年に上場した会社のトップとしての立場も考えたという。社長が難病だと知ると株主はどう思うか。実際、事情を知らない人からは「社長は酔っているのか?」「大丈夫なのか」と尋ねられたこともあったと江角さんは振り返る。
『熱狂宣言』の表紙に写る松村さんの姿に、「いい面構えだな」と注目したのが、映画監督の奥山和由さんだ。
「松村さんには、ネガティブをポジティブにひっくり返していく面白さがある」
奥山監督が知人に松村さんを引き合わせると、一様に「不思議にひかれる」と言ったという。
「その雰囲気の正体がわからない。理屈で説明できなかったら、そのまままるっと撮ってみるしかないなと」(奥山監督)
奥山監督が感じる松村さんの魅力の一つが、人間くささだ。たとえば松村さんは「(女の子に)モテたい」と言ってはばからない。様々な撮影で身につける衣装はすべて私服だ。
「この前、自宅にあるブランド靴を数えたら113足ありました」と笑う松村さん。
「難病でもこれだけ楽しく人生を送れているのは皆さんのおかげ。生き方でも仕事でも、これからも(世の中を)ビビらせていきたいです」
(編集部・小野ヒデコ)
※AERA 2018年10月22日号