タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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「新潮45」の休刊が発表されました。8月号に掲載された「LGBTへの支援は行き過ぎだ」という杉田水脈議員の寄稿が炎上。それを受けて同誌が10月号で反論の特集を組み、さらに性的少数者への差別と憎悪を助長するような内容を掲載して社内外から強い批判を受けた結果です。
誤った知識をもとに露骨な差別感情を綴る署名記事の行間には書き手の愉悦すら滲んでおり、衝撃を受けました。
差別的な記事を掲載した新潮社を激しく非難する声がある一方、性的少数者のなかにも杉田氏に共感を示す人があり、SNSは大荒れに。
そんななか気になるのは、さほど関心もなく眺めている人たちです。
冷笑的な態度で他人事と決め込んでいる人もいるだろうし、本当に興味がない人もいるかも。別に悪気があるわけではなく、単に身近な話ではないという理由で。
今回の問題では、ショックで体調を崩したり、恐怖を感じたりしているLGBTの当事者がたくさんいます。直接攻撃されなくても、差別的な言説が話題になっていること自体に強いストレスを感じる人も。
左利きと同じくらいの割合で存在する性的少数者が不安を感じている現状に「興味がない」という態度でいるのは、消極的な排除でもあると思う。ただ無関心であるだけで、誰かを追いつめることがあるのだから。
かと言って、独りよがりの共感がいいとも思わない。私の知人友人にも性的少数者はいますが、ではいま彼らに対して「私は胸を痛めている」と問わず語りに伝えることが必ずしも正しいとは思えません。
差別には断固としたNOを。ただ怒りの応酬に終始するのではなく、これをきっかけにLGBTについて正しく知る機会を増やすことが重要です。正しく知れば態度が変わる。知識は人の些細な言葉や眼差しに表れて、世間の空気を変える力があります。能天気な理想論に聞こえるかもしれないけど、本気でそう思っています。
※AERA 2018年10月8日号