9月30日投開票の沖縄県知事選で鍵を握るのが、公明党支持者の投票行動だ。東京の論理で決まった自民との相乗りに、沖縄の創価学会員が怒りをぶつけた。
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故・翁長雄志知事が当選した前回(2014年)の沖縄県知事選で自主投票だった公明党沖縄県本部は8月20日、自民党県連が知事選擁立を決めた前宜野湾市長の佐喜真淳(あつし)氏(54)と政策協定を結んだ。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題には触れず、「海兵隊の県外国外分散移転」など5項目を盛り込んでいる。
これに、猛然と抗議する沖縄創価学会員がいる。
「『辺野古』に言及せず、海兵隊の県外・国外移転を掲げるのは、まやかしです」
今回初めて実名取材に応じた那覇市の仲宗根政良さん(76)だ。1982年の入信以来、学会内で選挙運動に熱心にかかわってきたという。
「12年12月の衆院選で公明党と創価学会は本性を現しました」と仲宗根さんは振り返る。自公が圧勝し、第2次安倍政権誕生に導いた同選挙。公明党は、憲法改正による国防軍創設や集団的自衛権の行使を公約に掲げた自民党とタッグを組んで政権に返り咲いた。沖縄ではその後、自民党国会議員が「辺野古移設容認」へと公約を翻し、自公が推す仲井真弘多知事が辺野古埋め立てを承認した。
公明党のスタンスに疑問を募らせた仲宗根さんは、今年2月の名護市長選で辺野古新基地建設阻止を掲げる「オール沖縄」が推す稲嶺進候補に激励文を送り、妻とともに街頭で支援活動に加わった。半ば公然と学会に反旗を翻したが、除名などの処分は受けていないという。
「私は組織で白眼視されていますが、今も学会員です。沖縄に寄り添い、平和を守る教義に反しているのは本部側です」
党県本部は今も「県内移設反対」をうたうが、仲宗根さんはこうはねつける。
「辺野古新基地建設反対の沖縄の民意を知っているから建前として『県内移設反対』を掲げているだけ。選挙では『辺野古には触れるな』という統制も利いています。東京の論理を押し付けるのではなく、投票先は学会員それぞれが決めるべきです」