ただ、AIにできないことと言っても、何かとんでもないことを要求されていると思わないほうがいいでしょう。たとえば並のエスプレッソはAIで安価に作れても、本当にうまいエスプレッソは今のところ人間の手が必要です。ワインも生産過程に相当AIが導入されている業界ですが、まだまだ人間が作り出すレベルには達していません。つまり味、雰囲気などデータがなかなかそろわない要素が重要で、かつ気候変動などのせいで過去のデータではすべてが判断できない業界では、人間はまだまだAIに勝てる可能性がある、ということです。

 そしてよく考えてみるとこういうビジネスは大企業には適しません。大型の装置に設備投資をして大量生産をする薄利多売型ビジネスに向かないところにこそ、人間にとっての活路があります。つまりどこかの企業で働く時代から、自分で稼ぐ時代への大転換期が来ているということも言えるわけで、我々はまさにビッグチャンスを目の前にしているのです。

 こうしてみると悪い話ばかりではありません。人間が人間らしく立ち上がる時代が来たのだと言え、実に喜ばしい話でもあるのです。

AERA 2018年9月3日号

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ぐっちー

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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