ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 前回は、AIの進出がかつてない大失業時代を招くという話でした。しかし一方でAIが苦手なのは、これまで経験したことのないことを創造することです。それができる人はあまりいないので、必然的にそういう人々はとんでもない報酬を得られます。そうでない人はAIとの競争にまみれ、低賃金化していく現実があるわけです。金融の例で言うと、全く見たことのない新事業に融資するか否かが決断できる人が求められる一方、これまでなら優秀とされた、早く正確に事務処理ができる人材は必要ないのです。

 AIは電気さえ供給できれば24時間無休で賃金なしで働きます。同じことをやるなら、人間がかなう相手ではないのです。そうなると、今の労働の90%と言われる書類作業などの単純作業に従事する人たちの賃金が上昇するなんてことはあり得ません。兆候はすでに現れています。AIとの競争に拘泥し、しかしAIを導入するコストをケチり、低賃金重労働で人をこき使うブラック企業の増加がそれです。AIに対抗するために雇われた低賃金労働者なんて、まるで機関銃に竹やりで突撃する日本軍を彷彿とさせますね。

 AIにはできない能力を持つ人は、年収2千万円程度で大企業に勤め、うるさいおやじにとやかく言われ、朝満員電車に揺られて、有給休暇もろくにとれない……なんて職場には振り向きません。自分でやったほうがはるかに儲かるし楽しい。南の島のプールサイドで仕事をしていればいいわけですから、2千万円じゃ動きません。AIの進出で所得格差が広がるわけです。

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