「ポスト安倍」と目されていた岸田文雄政調会長の不出馬で安倍1強がより鮮明なものとなった。党内リベラル派閥の「陥落」にも宏池会OBは「察してください」と言葉は少ない。
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自民党の岸田文雄政調会長は8月1日、自らが率いる岸田派(宏池会)の所属議員のうち当選4回以下の若手7人を会食に招いた。目的は「ざっくばらんな形で(不出馬を決めた理由を)説明したいということだった」(参加した若手議員)。
岸田派内はベテランを中心に安倍晋三首相から将来の「禅譲」を期待する慎重論と、若手を中心とした総裁選出馬を求める主戦論に分かれていた。
会合の途中、岸田氏が報道に苦言を呈する場面があった。
「ないことばっか書きやがってさぁ。ウソに決まってる」
岸田氏が「ウソ」と言うのは安倍首相と膝を突き合わせた6月18日の出来事だ。一部報道によれば、安倍首相と二人きりの会食を持った岸田氏は、総裁選に出馬した場合、処遇はできないと伝えられた上で、総裁選への出馬を問われた。岸田氏は煮え切らない様子で答えた。
「どうしましょうか」
前出の若手議員は言う。
「一部報道は頼りないイメージを押し出したかったようにしか思えない。若手からも慰めではないが、『今度は頑張りましょう』と声をかけた。(岸田氏は)外務大臣、政調会長として安倍総理を支え続け、『最後のご奉公』と話していた。次は狙うと」
そして、こう続けた。
「岸田会長が安倍総理支持を打ち出した以上、岸田派はそれで動く。一つにならなければ自民党のなかで埋没する」
安倍首相出身派閥の細田派に、麻生、二階両派を加えた主流3派が早々に安倍3選支持を表明。「ポスト安倍」と目されていた岸田氏が不出馬表明したことで安倍1強がより鮮明になっている。さらに政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「宏池会の終焉も意味する」と指摘する。
宏池会は「所得倍増計画」を打ち出した池田勇人元首相が創設。国民重視の政治を掲げる自民党の名門派閥で、現在は岸田氏が会長に就く。憲法9条の維持が伝統的な見解だが、
「総裁選後に憲法改正が政治日程に乗ってくるのは確実。それをテーマにしないで安倍総理につく。宏池会自体が死んでしまったと言える」(角谷氏)