「保体審は推薦入学に強い権限を持っています。学部側は形式的に面接はしますが、受け入れを拒否するのはほぼ無理です」
こう内情を明かすのは、日大教職員組合文理学部支部長の初見基さん(60)だ。
「保体審には逆らえないという暗黙の了解があります」
商学部元教授の竹内幸雄さん(73)は「日大は大手私大の中では非常に特殊な大学です」と語る。2011年から定年退職する14年まで評議員として評議員会に出席、田中理事長の権限が膨張する様子を目の当たりにしたという。
「私大では総長は教学と経営両方に関わるのが一般的です。しかし日大では12 年に『総長』を『学長』に名称変更しました。これは学長を教学面のみの長とし、理事長を大学運営のトップに据えるということです」
かつて日大には「会頭」という全学トップの役職があり、その弊害を訴えて日大闘争が起こったが、逆戻りとも受け取れる決定だった。竹内さんは言う。
「反対したのは120人の評議員中、私ともう一人だけでした」
31日、日大教職員組合は内田前監督の常務理事など全役職からの解任、田中理事長と大塚学長の辞職を求める要求書を提出した。
内田前監督を“懐刀”として重用してきた田中理事長はこの間、表舞台に一度も姿を見せていない。一方、内田前監督は、監督は辞めても、常務理事の職については「一時(職務を)停止して謹慎する」と言い残し、入院。その後、理事会で辞任が了承された。日大全共闘の三橋俊明さん(71)は言う。
「われわれを襲った体育会学生は誰にも言わずに卒業し、今もどこかで生活している。今回、暴力行為に加担したことを告白し、謝罪する学生が出てきたことに希望を見た」
日大全共闘有志は今回の件に関して、6月10日に予定されている集会で声明文を出すという。(編集部・小柳暁子、渡辺豪)
※AERA 2018年6月11日号