出産を巡り問題になった政治家の発言(AERA 2018年5月21日号より)
出産を巡り問題になった政治家の発言(AERA 2018年5月21日号より)
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 デリカシーも政治家としての責任感もない発言がまた聞かれた。国のために産めという論理が背景にある。女性たちは呆れ、憤っている。

 千葉県に住む女性(40)は仕事からの帰宅途中、スマートフォンをぎゅっと握りしめた。画面に映るのは友人がシェアした記事。自民党の加藤寛治衆院議員(72)の発言を読んで、悲しく、悔しい気持ちがこみ上げてきた。

 加藤氏は5月10日、所属する自民党細田派の会合で、自身が招かれる結婚披露宴では、「必ず新郎新婦に3人以上の子どもを産み育てていただきたいとお願いする。いくら努力しても子どもに恵まれない方々がおり、そういう方々のために3人以上が必要だ」と話していると説明した。さらに若い女性たちに向けて、「結婚しなければ子どもが生まれない。人様の子どもの税金で(運営される)老人ホームに行くことになる」とも話していると明かした。

 冒頭の女性は3年前に10歳上の男性と結婚。晩婚だったため、すぐに妊活をスタートさせたが、先日4度目の顕微授精に失敗し、まだ子どもはいない。

「私たちのような人の気持ちを踏みにじるような発言。そもそも産むとか産まないとかは私が決めること。親にさえ言われるのは嫌なのに、踏み込んでこないでほしい」

 加藤氏の発言は、第1に人権を踏みにじっている。長崎大学大学院の池上清子教授は言う。

「子どもを産むか産まないか、何人産むかは、国際的に認められた人権です」

 第2に、この発言は、不妊に悩む多くの人々にあまりにも失礼だ。

 ただ、過去にも出産を巡り、政治家の問題発言は何度も繰り返されてきた。

 2007年には、柳沢伯夫厚生労働相(当時)が女性は「産む機械」と述べて批判を浴びたし、昨年秋には、女性である山東昭子参院議員(76)が「4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討しては」と述べた。

 今回、加藤氏は後に発言を撤回しておわびのコメントも出している。だが、本音が表れたと言わざるをえない。

 病児や障害児の保育を行うNPO法人フローレンスの代表理事、駒崎弘樹さん(38)は自身のツイッターにこう書いた。

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