(2)の「疎外感」は、誰にもわかってもらえないと思い込み、人に会いたくない気持ちになる、自分の周りにいる人の態度が変わったように感じたりすること。買い物や外食など街に出たときや、近所づきあいなどの場面で感じることが多い。死別から半年を過ぎたころから現れはじめ、4つの反応の中では最も早く消えていく。
(3)の「うつ的不調」は、予想を超える苦痛に心が反応し、眠れなくなったり食欲が低下したり、無関心、無気力、不安や恐怖など、うつとそっくりの症状が現れる。死別後は知らず知らずのうちに緊張状態が続くので、交感神経と副交感神経のスイッチの切り替えがうまくできないことが原因だという。特に、命日や誕生日などが近づくと反応が強く出て、これを「命日反応」と呼ぶ。
赤ちゃんを亡くした親たちの中には、1年後や2年後にひどいうつ症状が出て、一番つらい時期を過ごす人もいる。悲嘆の反応とは別に、自責や怒りの感情があふれ出るケースもある。赤ちゃんの死に対して「自分が何か悪かったのではないか」と罪悪感を抱いてしまう母親も多く、 医療関係者に対して「見落としはなかったのか」「判断は適切だったのか」などといった怒りがわいたり、「なぜ私の赤ちゃんだけ」という理不尽な思いを抱くこともある。
(4)の「適応対処の努力」は、「今のままではダメだ」「亡くなった人の分まで頑張らなければ」などと自分を奮い立たせ、無理に頑張る反応。思うようにいかず、自分を責め、自信を失い、また頑張る……を繰り返す。
「大切な人を亡くした人は、常に(1)~(3)の3つの心的反応と、(4)の現実に戻ろうとする理性が天秤の上で揺れ動いて、時間が経つにつれ、その揺れ動きがゆっくりになっていきます。悲しみは一生消えるものではありませんが、平均して死別後4年半ほどすると悲嘆の反応は落ち着いてきます」(宮林さん)