●企業に出向き説明 就職後のフォロー最大5年

 こうした取り組みに当初からかかわる西村優紀美アクセシビリティ・コミュニケーション支援室長は話す。

「学生は、学校生活の中で徐々に『困っていること』を自覚し、支援の中で、それまで感じていた生きづらさ・つまずきが自分のせいではなく特性のためだと理解する。『今は自分で判断してできることが増えた』と自信をつけることもできる。特性との向き合い方が分かってくると、社会に出てからの対処法もイメージできるようになります」

 就職後のフォローも原則3年、最大5年まで行っている。定期的に面談やメールで近況報告をもらうが、悩みを相談する中で退職を思いとどまったケースもある。職員が企業に出向き、事情を説明することもあるという。

 支援室の桶谷文哲・特命講師が話す。

「本人の特性や配慮内容を伝えて企業側の理解を進めることも、学生を見守ってきた私たちだからこそできる役目かなと思っています」

 Kaienにとっても、発達障害について企業の理解を進めることは大事な戦略の一つだという。

 同社は今年2月に初めて「発達障害学生のための企業合同面接会」を企画し、大手など20社が参加した。その面接会の前に、鈴木代表は企業担当者を集めて「発達障害学生の採用ポイント」を1時間かけて話した。発達障害の特性から仕事上での注意点、彼らの「伸びしろ」まで含め、イラスト入りのパワーポイントで細かく説明した。

 鈴木代表が語る「発達障害者の雇用についての課題と展望」は明快だ。

「今はまだ発達障害者が選べる職種も限られているが、その原因は学生側と企業側の双方にある。本人の自己理解を含めた努力と、企業側の理解・配慮をできるだけ近づけたいんです」

 目標は「こういう形でなら周囲と同じように働ける」という状況を整えたうえで、適材適所を実現させることだ。

「その上で本人のパフォーマンスが低ければ給料が下がっても仕方ない。この考え方は、障害者だけでなく主婦や高齢者らにも当てはまり、政府が進めている『働き方改革』にも通じるのではないでしょうか」

(ライター・豊浦美紀)

AERA 2018年4月16日号

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