竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
家康的経営を目指したい(※写真はイメージ)
家康的経営を目指したい(※写真はイメージ)

「コンビニ百里の道をゆく」は、47歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 私は、ビジネスは「勝ち続ける」ことが大切だと思っています。何よりも加盟店、クルーのみなさん、社員合わせて17万人とその家族に対する責任があります。イチかバチかで勝負に出て稀に勝つこともあるとは思いますが、それは蛮勇。経営者としては禁じ手です。時を待って入念すぎるほど準備をする。動いたときには、すでに勝負がついている──これはビジネスの「戦」としても理想です。そういう意味で、私は経営者としては徳川家康を目指します。

 江戸幕府が260年という長期政権となりえたのは、家康の並々ならぬ「勝ち」への執念があったからだと思います。性格を表す有名な俳句「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」からもわかるように、家康の強さは勝負の時が来るまで準備をし続け、勝機が来たとなれば圧倒的なスピードと実行力で「戦」を制すること。会社経営においてもすべて大切な素養です。

 家康は、徳川家が国を統治し続ける仕組みを整え、あの時代に75歳まで生きるという驚異的な生命力をみせた。武将として面白みがないとも言われますが、長生きも含めて最後まで勝ち切る人生を歩んだのは家康でしょう。

 もちろん、織田信長のイノベーティブな発想や、チャレンジングな精神には憧れます。傾奇者と呼ばれた波瀾万丈な人生と劇的な最期は、ヒーローにふさわしい。ただ、経営者の視点からすると、「お家断絶」になってはいけない。

 一方、豊臣秀吉の「憎めなさ」も見習いたい。現代でも、出世していく人は、どこか愛嬌がある。同じことを言い、同じことをやっても、人懐っこくて憎めない性格だと味方が増える。結果、自分の思い通りになる。彼が天下人になれたのは、周囲が応援したくなる可愛らしさがずば抜けていたからだと思います。

 経営者にも色々なタイプがいます。私は、豪胆な信長にあこがれながらも、勝機を見極め、小さくても着実に「勝ち」を重ねられる、愛嬌あふれる経営を目指したいですね。

AERA 2018年4月16日号

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竹増貞信

竹増貞信

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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