麻生財務相が理財局以外も調査する考えを明らかにした3月15日、財務省庁舎では夜もほぼ全館に明かりがともっていた(撮影/写真部・大野洋介)
麻生財務相が理財局以外も調査する考えを明らかにした3月15日、財務省庁舎では夜もほぼ全館に明かりがともっていた(撮影/写真部・大野洋介)
この記事の写真をすべて見る
改竄疑惑が報じられた3月2日、参院予算委員会が開く前に安倍首相と麻生財務相が「密談」 (c)朝日新聞社
改竄疑惑が報じられた3月2日、参院予算委員会が開く前に安倍首相と麻生財務相が「密談」 (c)朝日新聞社

「忖度」や「慮り」という言葉遊びのレベルはとうに過ぎた。文書を改竄してまで守ってくれた最強官庁の職員は自殺や不審死を遂げ、責任者たるエリート官僚は証人喚問に追い込まれた。

【写真】密談する安倍首相と麻生財務相

 学校法人森友学園への国有地売却に絡む決裁文書が改竄された疑いがあることを朝日新聞が報じてから10日後、財務省が事実として認めた。そもそも昨年2月9日、やはり朝日新聞が、払い下げ価格が近隣国有地の10分の1という法外に安い価格だったことを報じたのが全ての始まりだった。それから1年余、いろいろなことが起きた。

●完全にひっくり返った

 安倍昭恵首相夫人が建設予定だった小学校の「名誉校長」と紹介されていたが、首相は早い段階でこの土地売却について、「私や妻が関与していたら首相も国会議員も辞める」と国会で答弁。それに呼応するように、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は、全て適法に処理した上で、森友学園側との交渉記録などは廃棄し、「売却価格を提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」などと答弁した。同学園の籠池泰典理事長(同)は小学校の設置認可申請を取り下げ、国会の証人喚問を経て同7月には妻とともに大阪地検特捜部に国の補助金を巡る詐欺容疑で逮捕、起訴され勾留されたままだ。佐川氏は国税庁長官に「適材適所」として栄転した。

 だが、改竄の発覚で180度ひっくり返った。旧大蔵省の解体につながった、証券会社などからの接待汚職事件(ノーパンしゃぶしゃぶ事件、1998年)など、不祥事は幾度かあったが、根本的に構造が異なる。

「総理大臣を守るためにインチキをやっているとすれば、次元も重みも全く違う。個人の汚職ではなく、政治体制の問題ですから。官僚は与党のシンクタンクであることは否定しませんが、それは政策に限ったこと。政局のサポーターには絶対になってはいけない。それを分かっていながら安倍首相は保身のために財務省を巻き込み、佐川氏がそれに協力したという図式でしょうか。安倍首相は弾劾を受けて然るべしです」

 こう断言するのは旧大蔵官僚として主計畑を歩み、官房長官秘書官を2度務めたあと政界に転身、蔵相と財務相を務めて2012年に引退した藤井裕久氏だ。佐藤栄作政権時代の竹下登官房長官秘書官当時にはこんなことがあったという。

次のページ