その一方で、外食、小売り、金融といったサービス業では、非正社員の登用で一歩先を行く。小売りや外食などでは非正社員の比率が高く、小売りを例にとれば、パートが商品陳列をはじめ正社員と同じ業務を受け持ってきたからだ。

 一橋大学大学院の島貫智行教授によれば、先進的な企業では人件費の削減から技能の向上に軸足を移す。非正社員にも高度な業務を与え、正社員に転換できる仕組みを早くから整えた。

「その企業に対する顧客の評価は、接客する非正社員の質にも左右されます。企業が育成に励むことでサービスの質を担保しやすくなる」(島貫教授)
登用試験を年2回する

 ここに「2018年問題」が浮上する。通算で5年を超えて勤めた契約社員などが無期限で働けるようになる「5年ルール」と、同じ部署で3年以上勤めた派遣社員を派遣会社が無期限で雇用などをする「3年ルール」がある。働く側の申し出があれば企業側は従わねばならない。

「経営側は、正社員や無期限に雇用する社員を増やして固定的な人件費がかさむことに深い恐怖感を抱く」

 複数の人事担当幹部が口をそろえる。だが、日本の構造がそれを許さなくなりつつある。少子化だ。労働力調査によれば、昨年12月の就業者は前年に比べ52万人増えたのに対して、完全失業者は同19万人減の174万人にとどまる。冒頭のような働き手の取り合いは必然だろう。

 製造業でもサービス業を追いかけ、非正社員を正社員に登用する制度を整えつつある。ある製造業の会社では試験を年2回実施する。3カ月、3カ月、6カ月と契約を3回満了した契約社員を対象に、本人の希望と職場の推薦があれば受けられる。

 大企業では濃淡があるものの、「人手不足時代」の備えが進みつつあるとの評価が定まったようだ。経済情勢がよかったことから、非正社員の処遇改善におおむね前向きとされる。

「いま働き手が集まらなかったら、日本では事業を継続できない」(前出の労務担当役員)

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