女性は3年生のクラス担任だ。午前7時半に出勤。帰宅は午後9時になる。クラブ活動や委員会の指導、教職員の会議にも出席する。仕事量は正規教員と同等かそれ以上だと感じている。にもかかわらず、経験年数が12年になると、基本給は月約26万円で頭打ちになる。女性の現在の月給は手取りで20万円足らずだが、正規教員との格差は、常勤講師としての期間が長くなるほど広がる仕組みだ。
「頑張っても頑張っても評価してもらえないのかなと思うと、心が折れそうになります」
保護者の視線もつらい。「授業中に暴れる子もいるクラスだから、常勤講師には荷が重いのでは」と学校側に、暗に担任を正規教員に代えるよう要望する保護者もいた。
「常勤講師だからという理由で、保護者からも職場の同僚からも、『格下』という目で見られるのはやりきれません」
教員採用試験は毎年、チャレンジしている。担任になると、試験勉強の時間も確保できない。将来への不安も重なり、ストレスが募る。児童と丁寧に接するゆとりを持てず、やりがいも削がれていく。女性は言う。
「社会的な課題として改善に取り組んでもらいたい」
地方公務員法には、同じ職務に従事する職員に同じ給与を支給する「職務給の原則」がある。民間の「同一労働同一賃金」に相当する規定だが、多くの自治体が内規で非正規教員(臨時的教員や非常勤講師)の給与の上限を設けているのが実情だ。
正規教員の不足は、子どもが多かった1970年代に大量採用された教員が定年退職を迎える中、各自治体が少子化に備え教員採用枠を絞り込んだことが背景にある。これに伴い、公立小中学校の非正規教員の需要が増加。ハローワークに臨時的教員の求人を出す自治体も珍しくない。
非正規公務員の実態に詳しい地方自治総合研究所の上林陽治研究員は言う。
「公務員は処遇もいいはず、という社会の先入観が非正規公務員の雇用改善を阻んでいます。非正規職員に依存して公共サービスが展開されている現状を直視し、処遇を見直さないと、国民の暮らしを守れなくなります」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2018年2月26日号より抜粋