中規模以上の都市には地元の企業と大企業の支店が混在している。都市周辺にある農業や漁業地域にとってその都市がマーケットとなり、地域で経済が回り、一人当たりの所得は上がる(都市的な経済)。対して農林水産業に頼る「農林水産業的な経済」エリアは、人口増によって限られたパイを分け合い、一人当たりの所得が低下することにもなりかねないので、必ずしも人口増は必要ないという。中規模以上の都市では人口をどう増やしていくかが課題となる。そのためにはセンシュアスシティー(官能的な街)、中でも「“東京みたい”じゃないから楽しい街」をつくることが重要だと話す。

 そしてあと一つ、地方創生の鍵を握るのは「女性」だという。地方でも男性が働く場所は多くある。しかし、地方での女性の地位はまだ低く、キャリアを生かせる仕事も少ない。そのため、妻がIターンやUターンに反対し、移住を断念することは少なくないからだ。飯田准教授は力を込める。

「地方こそ、女性の地位向上に真剣に取り組まなければいけない」

 地域の活力を取り戻すマニュアルはない。それでも、失敗に学び、成功からヒントを得ることは難しくない。それが地方創生の大きな一歩につながる。(編集部・野村昌二)

AERA 2018年2月19日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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