ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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写真=撮影/写真部・片山菜緒子
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

【AERAの記事「人知れず潜む 至福の絶メシ道」】

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 先週号のAERAの記事「人知れず潜む 至福の絶メシ道」は地方の多くの「伝統店舗」がいま、後継者と利益不足で廃業の危機に瀕しているという内容でありました。東京でも事情は同様ですが、地方で飲食店を経営する立場から見ると、まさにその通りであります。

 飲食は手間がかかる割には儲けが少ないため後継者が育たず、とても美味しいのに閉店するケースが後を絶たないという話は日本全国でよく聞く話で、わたしが仕事をしている岩手県などでも同様です。

 一方、世界に目を向けると、飲食は今や一番儲かる産業の一つで、事実、人口わずか18万人のサンセバスチャンというスペインの田舎町ではミシュランの星の数を合わせると10個以上にもなるレストラン群があり、世界中から人がやってきてお金を落としています。スペイン全体で見ても観光収入は国内総生産(GDP)の11%にもなり、日本の0.5%とはケタ違い。その収入の大半が世界遺産などではなく、こういう地方の飲食というわけですから、その影響力は工業の比ではありません。

 日本の飲食の大きな問題は「安さ」にあります。この記事でも取材されているように、手間の割には儲からず、大手チェーン店に地元勢が駆逐されているというのが日本の地方都市の姿です。要するに、きちんとお金を取れるビジネスになっていない。「飲食は安くて当たり前」なのです。

 ヨーロッパには、パトロン文化があり、気に入ったレストランにはファンたちが足繁く通って経営を支えています。お金を払うお客がいなければ経営は成り立たないわけです。それを数百円安いからといってチェーン店にお客が流れるなら、地元の飲食店はつぶれるに決まっている。飲食を「文化」として育てる気概がまったくないのです。

 岩手県花巻市でマルカン百貨店のレストランが閉鎖の危機に瀕し、やる気のある若い連中が再生を手がけましたが、ここで強調したいことは「そもそも花巻のみなさんが大事に思って通っていればつぶれませんでした」ということ。そんなに閉店を惜しむようなレストランなのであれば地元の人々が飲食文化として「支える」気概が必要だということです。そこで初めてサンセバスチャンのように世界の観光客がお金を落としに来る「仕組み」ができるのです。

AERA 2018年1月29日号