




漫画家・永井豪さんの不朽の名作「デビルマン」の新たなアニメ作品を湯浅政明監督が制作した。Netflixでの世界同時配信を前に、二人の対談が実現した。
* * *
──作品はご覧になりました?
永井豪(以下永井):これまでも複数の映像作品が作られていますが、今回の「DEVILMAN crybaby」では、本質的なところを完全にとらえたデビルマンを作ってもらえたのが一番うれしかったですね。
湯浅政明(以下湯浅):はい、できるだけ原作マンガのテーマを読み解こうと、いろんなものを読ませていただきました。中でも、最後のシーンで主人公・不動明の友人・飛鳥了が何を思ったのか。何を受け取ったのか。きちんと伝わるようにしたいなと思いました。それがこの作品のテーマになると思ったからです。
──そのテーマとは?
湯浅:一言で言うと「愛」です。了は、合理的な考えでは説明できない愛情を欲している。そこでずっと自分に心を開き続けてくれた明を了は一番愛したのかな、という解釈をしました。
永井:(原作を描いているときに)途中までは全然気づかなかったんですが、了が自分のルーツを知るあたりから、自分が描いていたのは、了の物語だったんだと思いました。了が明を自分の世界に引っ張り込む物語だったんですね。作者として私が一番同調していたのが了で、了の視点で物語を作っていたと気づきました。
今回、最後のシーンをアニメで観ることができて、しかも美しかったのがよかった。ここまで来ないと作品は理解したことにならない。(これまでの映像化は)途中で終わったり、違うエンディングになったりといろいろあったので、このエンディングにしてもらえたのは本当にうれしかった。
──制作に当たり永井さんから湯浅さんに伝えたことはありますか?
永井:何もないです。自分は材料を提供するだけ。好きに作ってもらって大丈夫です、違ってもいいんですよ、という言い方をしました。丸投げです(笑)。
湯浅:かつて自分が原作マンガを読んだときは、当時の「今の話」と思って読んでいました。今初めて観る人にも「今の話」と思ってほしいと、時代設定は現在にしました。
作中でスマホやSNSが出てきますが、今はSNSがあるのが当然だし、(物語の中で)噂が世界に広がっていくところは、むしろSNSを使ったほうが、伝わっていく感じが一枚の絵で作りやすい、みたいな感じもありました。
永井:私がデビルマンを作ったのは45年前ですが、今回の作品は、今の若い人たちが観ても、今の自分たちの時代の話を描いているんだと感じられるんじゃないでしょうか。
湯浅:後半のスペクタクルになってくるシーンをどう表現するかは一番苦労しました。原作マンガでは、見開きでバーンと描かれていてインパクトがある。でも、それをそのままアニメにして動かすと伝わらない。デーモンや戦車がたくさん出てくるからといってそのまま描いても説得力がないんです。それを描かずに、何かが起こっている感じを出せるといいな、と考えながら作っていました。