「映画を作るなら、通行人でもいいから出してね」と約束していた。通行人ではない役で実現した映画「いちばん逢いたいひと」への出演。いくつもの問題提起のある作品で、高島礼子さんは「命の尊さ」とあらためて向き合った。
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30代の頃は仕事一筋。働いていた記憶しかない。次から次へと魅力的な役が舞い込んできて、当時は「この先も、ずっとこんな感じが続くのかな」と漠然と思っていた。
「とにかく目の前のことに一生懸命で、将来どんな女優になりたいかなんて、考える余裕はありませんでした。不安と楽しさの両方を感じつつも、いつもジタバタはしていましたね(笑)。先輩からは『俳優の仕事は、男性なら途切れずいい役が回ってきても、女性は年齢を重ねるといろいろ制限が増えるわよ』なんて話も聞いていて、40歳になった頃に、『たしかに最近はお母さん役が多くて、いただける役の幅が狭くなっているかもしれない』とも感じました」
今も昔も、スケジュールの都合を除いて、仕事を断ることはまずない。お芝居の仕事でもそれ以外でも、「すべては縁」と考えるようにしている。
「欲張りなんです。いただいた仕事は基本全部やりたい。昨年も、初めてのミュージカルのお話のあとに、連ドラのお話がきて、事務所の人には『スケジュール的に厳しいかも』と言われたんですが、『絶対やりたいです』と答えました(笑)。バラエティーや情報番組の出演が続くと、『あれ? 私女優だったっけ』なんて思うこともありますが、お芝居の仕事が続くと今度は、『バラエティーとか楽しそうでいいな』とか。結局ないものねだりで。最終的には、『楽しければいいか』に落ち着くんですけど(笑)」
「女優だから美しく」などという気負いはまったくない。若く見えたい気持ちもなければ、失敗したら恥ずかしいとも思わない。自分はこうだと決めつけないのが、楽しく毎日を過ごす秘訣だという。
「『○○しなければ』とか、『これができなきゃダメ』みたいなことを考え始めると、自分を追い詰めちゃうでしょう? 私は、自分の可能性を自分で制限してしまうのが嫌なんです。まだまだいろんなことに挑戦したいし、失敗したら『ま、いっか』って笑っていたい。せっかくこういう変化のある仕事をさせてもらっているのだから、いろんな変化を楽しみたいです」