ソチ冬季五輪で銀メダルを獲得したスノーボード女子アルペン・竹内智香選手が「AERA」で連載する「黄金色へのシュプール」をお届けします。長野五輪を観て感動し、本格的に競技をスタート。2018年2月の平昌五輪では念願の金メダル獲得を目指す竹内選手の今の様子や思いをお伝えします。
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ヨーロッパ各国などのウィンタースポーツ強豪国と日本を比べると、強化環境から競技自体への理解の深さまで大きく違うのが現状です。その中でも、私は日本で10代の頃からスノーボード競技を始め、その後にスイスというウィンタースポーツの本場の国でも選手として生活してきたことで、本当にフラットな目線で競技にかかわるいろいろなことを見られるようになったと実感しています。
以前、例えば私たちが競技で使うマテリアル(道具)もヨーロッパなどの有力選手に新しく開発された製品が優先的に出回るという話をしました。だからこそ、私が自分でマテリアルを作り出したきっかけにもなったのですが、ただそれは決して有力選手たちが恵まれているだけ、ということではなく、彼らはしっかり自分たちの力で激しい競争に打ち勝ってきているからこそ、得られた恩恵だと、私は思います。
その観点からすれば、私も含めて日本の選手たちはさらなる奮起が必要です。特にヨーロッパの選手たちは、本当に厳しい争いの中に身を置いているからです。
まず、どんな冬の競技でも強豪国では世界ランキングでトップ15位ぐらいまでに入っていない選手は、自国のナショナルチームに入ることができません。ただ、日本にはハイレベルの選手がそこまでたくさんいないので、実質は世界ランキング40位ぐらいまで範囲を広げてナショナルチームを作っています。それはヨーロッパでは、おそらくCチーム(Aがトップ)ぐらいに相当する順位です。
普通、30位、40位ぐらいの選手は競技のトップレベルの大会であるW杯には出られず、その下のカテゴリーの大会でたくさん試合数を重ねていきます。場数は本当に大切で、そこでの経験をもとに力をつけて、いざトップレベルの大会に参戦していく。もちろんせっかく上がったランキングも、また15位以下とかになってしまうと、再び下のカテゴリーの大会に逆戻りです。日本人はW杯出場へのハードルが低い半面、激しい生存競争を経験できないことが、成長への難しさにつながっていると私は思います。
私がスイスに行った時は、周りにはスイス代表に入る基準を満たしている選手ばかりでした。自ずと負けたくないと思ったし、そこで生存意識に火がついた。今の私が、形作られました。(構成・西川結城)
※AERA 2017年11月27日号