「故人が残したもののなかで、デジタル環境を通してのみ確認できるものがデジタル遺品です。写真や動画、メール、SNSのアカウントやその投稿、ネット証券・銀行の資産なども含みます」
デジタル遺品研究会ルクシーの古田雄介理事はこう解説する。同会に寄せられる相談の大半が「故人のスマホのパスコードが分からず、中身が見られない」という遺族からの訴えだ。
「スマホは今や、実印や預金通帳を入れた金庫と、アルバムやCD、本などを収納した棚の役割も担っているので、遺族がアクセスできないと困るのです」(古田さん)
ほかにも新聞のデジタル版、雑誌や電子書籍の読み放題など、毎月定額料金を支払うネットサービスは解約の手続きをしないと請求が続いてしまう。また、故人の思い出や遺影にもなる写真やビデオ、仕事上の資料やメールのやりとりがスマホに保管されるケースもある。誕生日などから考えられるパスワード候補を片っ端から試す人もいるが、入力ミスが一定回数を超えると自動的に初期化される端末もあり、全データを失う危険もある。またFXや株の信用取引のような元手資金を超える負債を抱える可能性がある金融商品では、放置すると損失が膨らむリスクも。遺族に請求が来るケースはまれというが、必ずしも免責されるわけではない。