カリフォルニア工科大学(カルテク)のキップ・ソーンは今回の受賞者の中で唯一の“理論屋”だ。カルテク卒業後、プリンストン大で相対論の大家で「ブラックホール」の名付け親でもあるジョン・アーチボルト・ホイーラーに学び、30歳で母校の教授に。研究を進めるうちに競争の激しいブラックホールを避け、親交もあったウェーバーの宿題、重力波に目標を定めた。重力波が本当に測れるかどうかという根本問題にも「測定可能」と結論づけ、自信を持ったが、それでもどのように見つけるかには悩んだ。
そして75年の夏、ワシントンでの会議に出ていたソーンはワイスと初めて対面し、一晩をかけて重力波について語り明かす。「どのようにしたら重力波検出ができるのか」。この時まだ2人は各々の道を進むつもりだった。
だが一方でソーンは理論家であって、自分では実験できない。カルテクで研究を始めるために、優秀な実験家を探した。見つけたのが英国グラスゴー大学のロナルド・ドレーバーだ。