ベンチャーで働く者誰もが一度は壁だと感じる「知名度のなさ」も、「大企業の看板が使えないからこそ、会社と自分を信用し、興味を持ってもらえるよう働きかけるしかない」というマインドを生むと話すのは、佐藤孝徳さん(34)。2006年に新卒で三井物産に入社。16年3月に退社し、6月に日本で先駆けて国際物流向けクラウドサービスを提供するベンチャー企業「サークルイン」を設立した。
国際物流向けクラウドサービスは海外では注目される分野だが、日本ではあまり知られていない。変化を嫌う物流業界で、社名もそうだが、業務内容そのものを受け入れてもらうのは易(やす)き道ではなかった。
「無名で業績もない。世の中のためになる面白いビジョンだと訴えても、同じように考えているベンチャーはたくさんあります。できるのは、僕らこそが一段上だと伝えることだけでした」(佐藤さん)
同じく三井物産出身の共同創業者と、それぞれの人脈を駆使して国際物流向けクラウドサービスの将来性を説いて回った。クライアントも必要だが、ビジョンを共有できる優秀なパートナーも必要。熱意を込めて伝えてもすぐにはうまくいかないが、この人がだめなら次、また次へと、興味を持ってくれる人にぶつかっているうちに、「これは」という相手にたどり着いた。最初の1人を突破すれば、2人目、3人目は難しくなかった。必要なパートナーが集まるまでに要したのは8カ月――。