個人に任される裁量やスピード感など、大手にはない魅力があるのがベンチャー企業。しかし一方で「知名度のなさ」という弱点も。ベンチャー企業の現場を取材した。
今回取材したベンチャー経験者全員が、ベンチャーで働く醍醐味(だいごみ)として挙げたのは、「スピード感」。アイデアはすぐ社長に提案でき、GOが出た瞬間に動きだすことで、多くのことを突破できる。
海外進出コンサルティングサービスの「サイエスト」では毎年、全社員で海外へ研修旅行に出かける。今年は急に決まった衆院選の投票日が、予定していた旅行日と重なった。社員の3割を占める「ママ社員」は退社後に期日前投票所に立ち寄る余裕がない。そこで、期日前投票のための半日休暇制度を急遽、新設した。企画からリリースまでわずか1週間だった。
サイエストの広報担当者は、
「弊社の場合、社内制度ではなく新規事業の場合でも、リリースまで1カ月ほどが普通です」
「裁量権」「決裁権」も「スピード感」と共に突破力を構成する要素だ。
大手アパレル会社に勤務していた女性(30)はその当時、80円のボールペンを1本買うのにも「なぜ替え芯ではなく本体か」の理由を文書にし、直属の上司、部長、総務部の承認を得なければならなかった。仕事の提案ともなると、関係部署に情報が行き渡るだけで数カ月……。