


電力自由化や、電気自動車(EV)、人工知能(AI)など、めくるめく技術トレンドの発信源である米カリフォルニア州シリコンバレー。ここで日本人が設立したEneleap Consultingは“逆輸入”ベンチャーの一つだ。
10年設立。エネルギー関連のコンサルティングを行う会社で、ゼネラル・エレクトリック(GE)でエネルギー分野の技術コンサルやマーケティング、戦略企画をしていた井上さやかさん(36)が起業した。
「エネルギー業界のグーグルはシリコンバレーで生まれるに違いない。そこで大企業とスタートアップをつなぐ仕事がしたいと思ったんです」(井上さん)
当時、オバマ政権が進めていたグリーン・ニューディール政策の影響で、シリコンバレーでは続々とエネルギー関連のベンチャーが誕生していた。井上さん自身もGEで、こうしたベンチャー企業との連携を手掛けていた。
Eneleap社はエネルギー関連の事業戦略立案やパートナー企業の提案などを行うが、最近ではEVや機械学習の相談も多い。以前は米国、欧州、日本の顧客が3分の1ずつ。昨年くらいから日本企業の割合が増えている。
「日本にはまだない市場がアメリカにはあります。例えば欧米では電力取引市場が活発で、それに関連するビジネスもある。日本での市場活性化を見越して、欧米のケースを知りたがる日本企業が増えてきました」(同)
同社のコアメンバーは井上さんを含めて3人。GEでスマートグリッド事業を手掛け、大手電力会社で働いていた元同僚と、米テスラの副社長を務めたこともあるメンバーだ。この3人に加えてプロジェクトごとに、機械学習の専門家やエンジニアらに声をかけてチームを組んで仕事をする。
「アメリカは人材の流動性が高いうえ、大企業でも副業ができる会社が多い。優秀な専門家とチームを組んで仕事をするということが、比較的やりやすいんです」(同)
日本よりも大きな市場を求めて、海外に拠点を設立したのが、同じくシリコンバレーに本社を置くWHILLだ。手掛けるのは、電動車椅子の開発・販売。12年に日本で創業したが、翌13年にはシリコンバレーにアメリカ本社を設立した。CEOの杉江理さん(35)は言う。