図版=AERA 2017年11月13日号より、写真=写真部・小山幸佑
図版=AERA 2017年11月13日号より、写真=写真部・小山幸佑
この記事の写真をすべて見る
図版=AERA 2017年11月13日号より、写真=ラクサス・テクノロジーズ提供
図版=AERA 2017年11月13日号より、写真=ラクサス・テクノロジーズ提供

 ベンチャー企業と大手企業の関係が変わり始めている。上下関係ではなくネットワーク関係。大企業のデータや資金を活用して成長を遂げる事例も目立つ。

 JR東京駅に直結した大丸東京店。特設されたカウンターに、多くの人が集まってくる。手にしているのは古着だ。

 古着1着につき1枚、「税込み1万800円の買い物をすると1千円分割引」というチケットがもらえる古着回収キャンペーン。綿やポリエステルなどの再生を手がけるベンチャー企業の日本環境設計が、大丸・松坂屋などの百貨店やスーパー、良品計画などの服飾メーカー約70社を巻き込んで、全国をカバーするリサイクルのネットワークを作り上げた。

 日本環境設計は2007年、2人とわずか120万円で設立。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で車形タイムマシン「デロリアン」として使われた車を、古着からつくったエタノールを燃料に走らせたことで世界に名をはせた。15年10月21日のことだ。同社の岩元美智彦会長は言う。

「みんなが『リサイクルは楽しい』と思わないと、参加してもらえませんから」

 捨てられた衣料品はほぼ焼却されるなか、同社が回収した綿はエタノールに、ポエステルは独自技術で小さな分子に分解・精製されて、同じ品質のポリエステル樹脂に戻す。古着1着は、ほぼ1着分の材料となって、よみがえる。

 今年10月には、スウェーデンのファストファッションブランドH&Mが、世界で初めてこのポリエステルのリサイクル生地を自社ブランドの衣料品に採用すると表明。ポリエステルのさらなるリサイクルに期待を寄せる。古着などの持ち込みがきっかけで、その店の来店者数や売り上げ額が伸びるという効果もあった。

 これまでに参加した消費者はのべ500万人。回収→再生→販売→着用→回収の「輪」は、日本環境設計を中心に着実に育っている。

 早稲田大学大学院の長谷川博和教授は、現在の日本におけるベンチャー企業と大企業の関係性を「ネットワーク」と表現する。ベンチャー企業が中心に立ち全体を俯瞰(ふかん)しつつ、大企業と手をつなぎ、事業の枠組みを動かす。日本環境設計はまさに、このタイプのベンチャーだ。

次のページ