私は山口氏の人間性を攻撃したいわけではありません。そもそも彼とは関わりたくもありませんから、攻撃したくもありません。私が声を上げたのは、彼と闘うためではなく、沈黙したら、同じような被害者がまた出てしまう。性暴力をオープンに話せる社会にし、司法や捜査システムを改善したいためです。
──9月、山口氏に1千万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。
メディアの方には「詩織さん、これからも闘うんですね」とよく言われますが、私は闘うつもりはまったくありません(苦笑)。ただ、全ての方法で事実追及をしなければ何が問題なのか、お話しできません。今回重要なのは、民事訴訟を起こすことで、裁判所命令で私が抱えられていく姿が映ったホテルの防犯カメラの映像を頂けるということ。また、開かれた場での裁判になるので、ブラックボックスに少しでも光を当てることができることです。
──ジャーナリストとして、これから性暴力にどう向き合っていきますか。
正直、もうこれ以上思い出したくないという気持ちもあり、性犯罪被害の話をしていくつもりはないと以前は思っていました。でもこの間、多くの人との出会いがあり、同じ被害に遭った人の声を聞く中で、ジャーナリストとして、その声を伝えなければと強く思うようになりました。この先も、このテーマと向き合っていくのだと思います。 (聞き手・構成/編集部・野村昌二)
※AERA 2017年11月13 日号より抜粋
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伊藤詩織さん「警察と検察にブラックボックスが存在する」不可解な捜査実態