互いににらみ合いが続き緊迫化する米朝関係。拉致問題の進展がますます遠のいてしまうことが懸念されるが、うまく交渉に持ち込む手立てはないのか。蓮池薫さんに聞いた。
──北朝鮮情勢を巡っては、米朝間で言葉の応酬だけでなく、軍事的挑発も続いています。北朝鮮はグアム周辺へのミサイル発射計画も予告しました。予断を許さない状況が続く中、拉致問題で交渉の余地はあるでしょうか。
今のような張りつめた米朝関係の中で、日本が拉致問題だけを取り上げて北朝鮮に呼びかけるのは、かなり難しいとは思います。だからといって傍観しているわけにはいきません。核・ミサイル解決の仲介に入るような形で、実質的に拉致問題の交渉に入る機会をつくる必要があると思います。
対話が難しい今は、北朝鮮が核放棄に向けた姿勢で交渉に出てくるよう圧力をかけるべきだとは思います。しかし、核放棄のあとにどのような未来があるかも具体的に提示していくべきでしょう。もちろん、当面北朝鮮は軍事的対応をするでしょう。あれだけ強く言っているのですから。しかし、北朝鮮は戦争になれば自分たちは滅ぶということを知っています。北朝鮮にとってもっとも重要なのは、体制の維持。戦争になるような行動には出ず、アメリカが軍事攻撃に至らない範囲内で最大限の挑発行動をやろうという考えです。そこで、まずは対話をしている間は核実験をしないとか、そういう譲歩を引き出すことが大切です。核放棄についてはその次の段階。いま北朝鮮から引き出すのは、核実験やミサイル発射のモラトリアム、一時停止です。
──それと同時に拉致問題への道筋も示す、と。
そうです。核・ミサイルと拉致問題は日朝交渉の入り口ではともに取り上げても実質上は拉致問題中心の交渉になるでしょう。トランプ大統領は9月19日の国連演説で横田めぐみさんに言及しました。アメリカの大統領が横田めぐみさんに言及したのは初めて。これは評価できると思います。