「喜んで受賞される方がいる一方で、例えば96年には、フランスのシラク大統領(当時)が、『広島の原爆投下50年に合わせて核実験を実施した』として平和賞を受賞したことも。研究者のなかには受賞が不名誉だと、拒否する人もいます。拒否した人にもお構いなしに、賞を贈ってしまうのが、イグ・ノーベル賞なんですけどね」(山本さん)
ノミネートは自薦、他薦によっておこなわれ、選考のハードルも本家よりはるかに低そうだが、意外にそうでもないらしい。ノーベル賞より予想が難しいのはもちろん、取るのも難しいと考える科学者も少なくない。
同館の科学コミュニケーション専門主任でノーベル賞、イグ・ノーベル賞担当の詫摩雅子さんは、その理由をこう話す。
「がんが治ればいいな、青色発光ダイオードができればいいなというように、多くの人が取り組んでいる研究を、最初に提唱し、実現した人に贈られるのが本家ノーベル賞です。かたやイグ・ノーベル賞は、その人がやらなければ、誰もやらなかったような研究に対して贈られるものだからです」
日本人受賞者リストを見てもわかるように、日本はほぼ毎年のように受賞者が輩出し、アメリカ、イギリスに次ぐイグ・ノーベル大国になっている。
「受賞者が多いのは、やはり豊かな国。いつ役に立つとも知れない科学の基礎研究に、お金をかける余裕がある国と言えます」(詫摩さん)
またイグ・ノーベル賞を創設したマーク・エイブラハムズ氏が「日本とイギリスは、奇人変人であることを誇りとする国(だから受賞者が多い)」と分析したことも。
そこでプレイバック日本人受賞者! 賞が創設された翌年の92年、資生堂の研究員らが「足のにおいの原因となる化学物質を特定」したことで、医学賞を初めて受賞したのが皮切り。大ヒットした携帯ゲーム「たまごっち」や犬の言葉翻訳機「バウリンガル」などが受賞したり、ドクター・中松氏が「34年間、食事を記録する」研究で受賞するなど、有名どころの名前も多い。