証券会社にとって、「つみたてNISA」はすぐには採算がとれません。販売手数料や信託報酬が低くて収入が抑えられ、制度の導入に伴うシステムの構築などで支出がかさむからです。

●非課税期間の恒久化を

 だから、私は各社に「儲かる、儲からないではありません」と繰り返し言っています。まずは「つみたてNISA」の利用者に、投資信託の運用で成功体験を得てもらうこと。そうすれば一生にわたって、この成功体験をきっかけとしてある程度の資産を株式や投資信託などに振り向けるようになるでしょう。

 この先、証券業界が繁栄するには、地道に利用者を増やすことが不可欠です。個人の金融資産の10%が株式に移るだけで180兆円の巨大市場が生まれます。入り口で一生懸命がんばった証券会社が未来の顧客を多く抱えられるのです。

 もちろん日本証券業協会も「つみたてNISA」の普及・周知に積極的に努めます。導入当初は反応が鈍いでしょうが、そのうち「いいぞ」と口コミで評価が広がるでしょう。テレビと同じで、普及率が一定水準を超えると爆発的に加速します。15~20%に達すれば、一気に100%まで駆け上がるイメージです。もっとも、20年くらいでは難しいでしょう。

 日本証券業協会は金融商品取引法で認可を受けた公的な組織であり、金融庁と一体になって活動しています。金融庁には、「つみたてNISA」の積み立て回数を年に2回や4回でも可能にし、対象商品については確定拠出年金に向けて設計した投資信託も取り入れていただきました。今後、実際に制度を始めてみて、「個別企業の株式も対象にしてはどうか」といった意見が出るかもしれません。

「つみたてNISA」は50年、100年かけて育てていきたい。そのためには、ぜひとも非課税期間の恒久化が望ましいと考えています。

(編集委員・江畠俊彦)

AERA 2017年10月9日号