日本証券業協会会長 鈴木茂晴さん(すずき・しげはる、70)/慶應義塾大学卒。1971年、大和証券(当時)に入る。引受第一部長などを経て、99年に大和証券グループ本社常務。2004年6月に社長。17年4月に最高顧問。同年7月から現職、大和証券グループ本社顧問を兼ねる(撮影/写真部・小原雄輝)
日本証券業協会会長 鈴木茂晴さん(すずき・しげはる、70)/慶應義塾大学卒。1971年、大和証券(当時)に入る。引受第一部長などを経て、99年に大和証券グループ本社常務。2004年6月に社長。17年4月に最高顧問。同年7月から現職、大和証券グループ本社顧問を兼ねる(撮影/写真部・小原雄輝)

 老後資金や子どもの教育資金――。お金の悩みは尽きない。マイナス金利の今、貯金だけじゃダメだと分かっているけど……。金融商品に下手に手を出して金融機関の言いなりになって損をすることも。こんな時代だからこそ、本当の投資を教えます。AERA 10月9日号では「資産運用」を大特集した。今回は、日本証券業協会の会長の鈴木茂晴氏に、お話を伺った。

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 貯蓄から資産形成へ。私が証券業界に入った1970年代から「間接金融(銀行融資)から直接金融(株式や社債での資金調達)へ」といった同じような目標が掲げられました。それでも状況は変わりません。

 これまで証券会社の主な顧客は、それなりの資産を持ち、投資経験も重ねてきた人たちでした。そうした顧客は高齢化して、関心事はもっぱら相続に関する内容です。地方ではこの悩みは特に深刻で、地方の証券会社に行くと、どこでも「お客さんの高齢化は深刻だ」と悩んでいます。

 半面、若い層にとっては子どもの将来に向けた、自助努力による資産形成の重要度が増しています。金利がほぼゼロの時代に、どうすればいいか。その答えが「つみたてNISA」です。資産形成のプロである証券会社がお手伝いさせていただきます。

 毎月分配型の投資信託を必要とする個人投資家はいます。年配で、投資信託自体は大きく値下がりしなければよく、年金のように配当を月々のお小遣いとして欲しいというニーズはあります。

●まったく新しい顧客層

 さらに投資信託の保有期間は平均3年半ほどといわれており、個人投資家の中には頻繁に銘柄を入れ替える方もいます。

 しかし、「つみたてNISA」は、そうした運用法とは一線を画し、有価証券(株式や投資信託など)の投資を経験したことがなく、証券会社もまったく視野に入っていない新しい顧客層が長期間コツコツと積み立てるのに使われるものです。

 対象とする投資信託が絞られているのも筋が通っています。投資未経験者にとっては大量の商品から選ぶよりも、値動きは安定すると見込まれ、販売手数料や信託報酬が低い──といった要件で限定されたほうがわかりやすいと思います。

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