
「コンビニ百里の道をゆく」は、40代のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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ローソンには連結子会社も含めると9403人の社員がいます(2017年2月末時点)。一般に、会社の図体が大きくなってくると、部門間の縦割り意識が生まれたり、机上の数字だけで仕事をしたりする「大企業病」に陥りやすい。これは百害あって一利なし。気がついたら、すぐに改善すべきです。
最も明確な解決策は、常に「これは現場のためになっているか」を基準に考えることです。私たちのようなフランチャイズビジネスは、いかに加盟店が仕事をしやすい環境を整えられるかにかかっています。商品開発、新規事業、広報、バックオフィスなど、あらゆる部門で全員が「現場や加盟店のために」と考えながら仕事をする。そうすれば、当該部門だけの利益を主張したり、上司の顔色だけをうかがったりする仕事のやり方は、必然的にできなくなります。
店舗でその運営を学び、それから各部門に配属するシステムをとっているのは、「現場」の大切さを知るためです。
もう一つ、過去の成功体験にこだわらない姿勢を持つことも大切です。人間はついつい、過去に成功したやり方に固執しがちです。でも、成功体験が新しいチャレンジの妨げになってはいけない。特に変化の激しいコンビニ業界で、過去と同じことをやっていて2年も3年も通用することなどありません。
前述した「現場」を考えても、全国各地で生活様式や嗜好が異なります。その時のそのマチに合った「店創り」をすることが何よりも大切なのです。成功事例を踏襲して通用しなかったときに、それを検証し、踏み台にして新たな仮説を持ってチャレンジできるか。謙虚に自分と向き合えるかが、その後の成長やキャリア形成にも大きな影響を与えるはずです。
とはいえ、人間は多くのことを忘れてしまう生き物。ついつい「現場」を忘れて、目の前の仕事や上司にとらわれがちです。だから私は、「現場」の大切さを100万回でも200万回でも言い続ける。それも社長の重要な仕事だと思っています。
※AERA 2017年10月9日号

