「どうしてそこまで怒るの?」「そこまで言わなくてもいいのに」――。このところ、イライラする人や罵詈雑言をはく人を目にする機会が多いとは思いませんか? あそこにもここにもいる「感情決壊」する人々。なぜ私たちはかくも怒りに振りまわれるようになったのか。それにはちゃんと理由がありました。アエラ9月11日号では「炎上人(えんじょうびと)の感情決壊」を大特集。怒りの謎に迫ります。
人間関係にトラブルはつきものだ。ネットの普及で、そんな小競り合いも周囲から“丸見え”に。穏やかなはずの自分も、あの人も。SNS上で怒りを増幅させ、常人の手が届かない「炎上人」に変身する。
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また、部下が1人辞めていった。会って話せば、そこまでこじれることもなかったのに。
都内の会社員男性(41)は、そうため息をつく。部下が続々辞めていく引き金は、大口のクライアントとの間で往復される電子メールだ。
繁忙期になると、クライアントからは進捗確認のメールが入り、チーム全員のメーリングリストで共有される。そのたび電話をされても対応に困るから、メール自体はありがたいが、先方も焦っているのか、文面がしばしばぶっきらぼうになる。
<あの案件、どうなっているんですか?>
相手の表情は読み取れないが、あまりに短い文はまるで「こちらの落ち度」と責めるようだ。クライアントの都合で唐突に振ってきた案件だし、無理を押して進行している。案件を担当する若い部下に、男性は助言した。
「少し待とうか」
すぐに返信せず、時間をあけてクールダウンして、という意図だ。だが、その直後、全メンバーへ部下からの返信が届いた。
<つい先日聞いた話です。スケジュールに無理があります>
気持ちはわかる。だが、発注者と受注者の関係上、時に理不尽もある。男性には覚えがあった。メール上で口答えすれば、さらなる攻撃の矢面に立たされる。案の定、先方のグループから矢継ぎ早にメールが来た。
<案件Bはどうなっていますか?><納期は大丈夫ですか?><報告に誤字がありました>