日本国内の美術品オークション市場は、90年代初頭のバブル崩壊以後低迷を続けている。「近代美術オークションインデックス」(シンワアートオークション、90年9月=1万)という価格指数をみると、一貫して下落を続けており、リーマン・ショックや東日本大震災の影響で一時300台に落ち込んだ。
最近は、アベノミクスを背景に、13~15年にかけて500台を回復したものの、その後はずるずると下落傾向だ。
それもそのはず、まず日本の市場規模は150億円程度にとどまっており、中国マネーの吸収も進んでいない。海外のオークション市場と比べても縮小ぶりが目立つのだ。
これは、バブル崩壊でデフレが長期化した日本では、美術品が「資産」として認識されなくなったのが一つの要因。さらに、コレクターが多いと言われた“団塊の世代”のリタイアも影響して、インフレが継続した欧米諸国と比較すると、美術品などの評価の違いは歴然となっている。
言い換えれば、これらのコレクション市場に投資して資産防衛策とするなら、国内投資家への売却ではなく、海外のコレクターに売ることを“出口戦略”と考えることが不可欠だ。レコードや切手などにしても、「外国人がどう評価するか」を基本に考えなければ、資産防衛には向かないといえる。(経済ジャーナリスト・岩崎博充)
※AERA 2017年7月17日号