●「豪や日本で不動産を」

 男性によると、訪日経験は何度もあるが、海外での不動産投資は初めて。中国内ですでに2棟のビルと、家族3人で暮らす自宅マンションを持つ。今後はオーストラリア、シンガポール、日本で不動産投資を考えているという。今回は10日間の日程で来日。まずは友人と共同でビルを1棟買う予定だ。

 この後の予定は同じく都内の日本橋にある物件の見学。足早にビル外観を確認し、ベンツに乗り込み走り去っていった。

 この爆買い現象、実は日本だけにとどまらない。さらに人気なのは米国やオーストラリア、ニュージーランドなど。不動産などに一定の投資をすれば永住権が得られるためだ。一方の日本は在留ビザどまりだが、それでも投資先に選ばれるのは、資産を分散したいという考え方と、隣国であり、暮らしやすいことも背景にある。

「中国には『不要把鶏蛋放在一个籃子里(卵を一つのかごに入れてはいけない)』ということわざがある。何かあった時に一カ所にまとまっていては、すべてダメになるからです。不動産にしても、中国、米国だけでなく、日本でも買う。通貨も、人民元、ドル、円を持つという人は多い」(スマイルの小林さん)

●“中間層”も動き始めた

 さらに中国内の不動産バブル懸念も“追い風”となっている。かねてバブルとされ、例えばマンション価格は10年で10倍やそれ以上になるケースもある。

 その影響もあって同社も好調が続く。14年、15年に売買した物件数は450件程度だったが、その後は減少傾向で、16年は370件。だが注目すべきはその内容だ。小林さんは続ける。

「件数は減っていますが、大きな額の投資が昨年から増えています。もともとは皆、日本の不動産の状況がよく分からなくて、投資額が1千万~数千万円の都内の賃貸向け物件を買っていましたが、今は10億円以上する都市ビルや沖縄、箱根などのリゾート地の物件、一戸建ての豪邸やタワーマンションなどの要望が増えています。関西などほかの都市部への投資もこの1、2年で増えました」

 現在は月に20件ほどのペースで成約。うち1~3件ほどが高級マンションなどの高額物件で価格は数億円から数十億円、まれに100億円超もあるという。

 中間層も動き出している。同社の海外部統括課長の新井陽太さん(35)は、「特に1千万~5千万円くらいのワンルームなどのオーナーチェンジ物件を買っていますね」。

 勢いは、増している。(編集部・山口亮子)

AERA 2017年7月17日号

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