映画プロデューサー西村義明さんと、元「うたのお兄さん」横山だいすけさん。アニメーション映画と歌。それぞれの方法で人々を魅了する二人が、児童文学『飛ぶ教室』が好きという一点で意気投合。本誌での対談が実現した。彼らにとっても大事なメッセージが詰まっている。
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横山だいすけ:二人とも『飛ぶ教室』が好きという話になったのは、つい最近、僕が三鷹の森ジブリ美術館に遊びに行ったとき。館内の書店で見つけて「この本好きなんです」と言うと、案内してくれた方が「西村さんが愛している作品なんです」と。
西村義明:『飛ぶ教室』が好きな人に悪い人は絶対いない! それくらい素晴らしい作品です。
横山:特別なことは起こらないけれど、家族や友だちのあったかさ、先生と生徒のかかわり、少年らしい価値観のぶつかり合いなどが詰まってる。
●号泣しながら読んだ
西村:そもそもこの本に出合ったのは、いつだったんですか。
横山:小学生のときに親の薦めで。まず題名に惹かれました。
西村:ですよね。教室が飛んでいくファンタジーかと思ったら、そんな話じゃない。
横山:けんかのシーンから始まるんですけど、そんな始まり方は日本の作品にはあまりない。グッと引き込まれました。
西村:小中学生のころはゲームっ子、高校から社会人までは映画っ子で、初めて読んだときのことは覚えていません。でも、いまから十数年前に読んだときのことは、はっきり覚えてる。プロデューサーとして「かぐや姫の物語」というアニメーション映画を作っていたころです。高畑勲監督を訪ねる前に喫茶店で1時間、号泣しながら読みました。この物語に号泣できる感覚が自分の中にあることがうれしかった。手に取った動機は不純だったんですが、その後、何度も何度も読み返しています。
横山:わかります。僕も表紙が破れちゃってテープで貼ってあるんですよ。ところで、その「不純な動機」ってなんですか?