日本にマンションが誕生して60年以上。今も年に10万戸ずつ増えている。たが一方で、建物と居住者の「二つの老い」や運営管理への無関心などにより、荒廃するマンションが急増している。何が起きているのか。防ぐ方法はあるのか。AERA 5月29日号では「限界マンション」を大特集。
価格の透明性が低く、かつては悪徳業者が跋扈したリフォーム業界。リフォームしたいけど、手抜きをされたら……。最近の裏事情を聞いた。
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──近年、Amazonまでもが「リフォームストア」をオープンするなど、異業種のリフォーム業界参入が急速に進んでいます。現場にはどのような影響が出ているのでしょうか?
A:ウチはもともと地元の個人のお客さんからリフォーム工事を請け負ってきたんですけど、ネットの紹介サイトに登録してからお客さんの裾野は広がって仕事が増えた半面、やりづらくなりましたねぇ。サービス業の感覚でパッケージ化するのが一般的になってきたから。お風呂のリフォームなら「込み込みで〇〇万円」みたいに。でも、リフォームは形のないものを売る商売なので、実際にはパッケージ化が難しいんです。現場を見ないとどんな工事が必要になるかわからないケースも多い。壁を剥がしてみたら内部が腐食していた、となったら補修が必要になるじゃないですか。キッチンそのものは形のあるものでも、“その家のキッチン”となると誰もイメージできてないから、パッケージどおり施工しても、「イメージと違う」とクレームを入れてくるお客さんもいる。
B:Amazonはもとより、リフォーム会社紹介サイト大手の「ホームプロ」さんもリクルートや大阪ガス系の会社などが株主の異業種企業ですものね。現場を知らない企業が、お客さんと我々をつなぐ窓口役を担っているから、どうしても業者としては不満を感じてしまう面はある。そもそも、見積もりの仕方も業者によってまちまちなんですから。例えば、壁紙の張り替え一つとっても実平米(実際に目に見える面積)で見積もりするのか、材料平米(必要な材料から算出した面積)で見積もりするのかで、まったく料金が変わってしまう。例えば高さ2メートルで1メートル幅の壁を張り替えるにしても、日本の壁紙は“尺”ですから幅が90センチメートルの壁紙が一般的。すると材料としては2メートル×90センチ×2の壁紙が必要となり、見積もり上はのりしろを加味して(2メートル+α)×1.8メートルで約4平米程度になる。見えている面は2平米なのに、材料から考えると2倍の面積分必要になってくるわけです。