飛翔時間が約30分というのは驚きだ(※写真はイメージ)
飛翔時間が約30分というのは驚きだ(※写真はイメージ)
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 北朝鮮が今年7回目の弾道ミサイル発射1段式の小型ミサイルが大陸間弾道ミサイル(ICBM)並みに30分も飛び、日米韓を驚かせた。

 北朝鮮が5月14日発射した弾道ミサイルは、朝鮮中央通信によれば、「火星12型」で高度2111キロまで上昇、787キロ飛行した。落下地点はナホトカ東南の日本海だが、飛翔時間が約30分というのは驚きだ。

 冷戦時代、米国、ソ連のICBM(大陸間弾道ミサイル)は30分ないし40分余りで1万キロ以上離れた目標に到達しえた。今回の実験ではわざと射程を短くするため、異様に高い軌道を選んでいる。通常、長距離弾道ミサイルは最大高度1千ないし1500キロの放物線を描いて飛ぶ。今回のミサイルを通常の軌道で30分も飛ばせばICBM(戦略兵器制限交渉の定義では射程5500キロ以上)に近い射程が出ると思われる。

●今年のパレードに登場

 北朝鮮はICBM「火星13型」を2012年4月のパレードに登場させており、米国DIA(国防情報庁)の資料に基づき英国で発行されている「ミリタリー・バランス」の今年版では6基が配備されている、としている。これは16輪の自走発射機に載せた移動式で、射程は6千ないし9千キロと推定されている。北朝鮮はこれを発展させた「KN14」(米国の仮称)を15年10月のパレードに出し、今回発射した「火星12型」も今年4月のパレードに登場した。

 これらの弾道ミサイルについては「虚勢を張るため原寸大模型を出したのでは」とも言われ、発射実験を行っていないため、開発途中との評価が一般的だった。だが今回「火星13型」(全長約20メートル)より小型で1段式の「火星12型」(同15メートル以下)が30分飛翔したことは、北朝鮮がすでにICBMを造ったか、近く造りうる能力を示すと考えられる。ただ、北朝鮮から米国東岸へは1万1千キロ、ハワイでも7千キロの距離だ。射程5500キロのICBMではアラスカに届くだけだから、当面は米本土の脅威ではない。

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