アエラの連載企画「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は竹尾の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■竹尾 企画部 市場開発チーム 課長代理 植村行人(38)
名刺にも描かれているシンボルマークの紙を運ぶ少年、通称「紙小僧」は16世紀にドイツで出版された書籍の挿絵からの引用だという。サンプルを見ながら紙を選べる「竹尾 見本帖本店」(東京・神保町)で、植村行人にも紙見本の束を運んでもらった。
竹尾は「ファインペーパー」と呼ばれる特殊印刷用紙の企画や開発、販売などをする紙の専門商社で、約9千種の紙を扱う。植村は展示会の企画制作などを担当する。
「デジタルの時代だとか、紙離れしているとか、みんな簡単に言ってしまっているような気がするんです」
そう思うからこそ、展示会では紙が身近なものであるということ、紙の可能性や魅力、面白さを伝えたいと思っている。そのためにはどういう展示会にするか、何を見せるか、案内状はどうするか、販促グッズは何を作るか。デザイナーと加工所、会社との意向のすり合わせや調整をするのが植村の役目だ。可能な限り、印刷や加工の現場を見せてもらい、理解する。
「『できない』と言うのは簡単。できないことでも折り合いをつけつつ、どうしたら皆の理想の形に近づけられるかを考えるようにしています」
東京造形大学でグラフィックデザインを専攻し、卒業後はグラフィックデザイナーとして6年ほどを過ごした。2006年に竹尾へ入社すると、販売促進本部や営業部を経て、14年に現職。現在、植村含め6人のチームで年間20本ほどの展示会などに関わる。
とにかく紙が好き。理想の休日は、紙を探しながら街を歩き、夕方から居酒屋でお酒を飲みながら紙のことを考えることだ。
「繊細に丁寧に観察して分析していけば、紙は様々な表情を見せてくれる。見逃していたことが見えてくるんだろうなと思っています」
静かな口調だったが、紙の可能性を誰よりも強く信じている人の言葉だった。
(文中敬称略)
(編集部・大川恵実 写真部・東川哲也)
※AERA 2017年2月13号