賀川さんがとりわけ都留の良さを実感したのは、がんを患った夫を、働きながら在宅介護した時だ。夫は特殊ながんだったため、手術や主な治療は東京の病院で受けたが、車で1時間という近さがありがたかった。また地元の友人たちがネットワークを駆使し、ケアマネジャーや介護に関する情報を教えてくれるなど親身にサポートしてくれた。夫は2年前に他界したが、最期の時を、思い出の詰まった都留の家で過ごすことができて本当に幸せだった。賀川さんはそう振り返る。

 一人になって、山の中の大きなログハウスに暮らすのは寂しくないのか。そう尋ねると、賀川さんは大きく首を振った。編集の仕事に加え、富士山の湧水で栽培する都留特産の「水掛け菜」の普及活動やコミュニティーづくりなどで大忙しだという。

 昨年は借りている田んぼで初めて米づくりにも挑戦。収穫した米で仲間とつきもした。

「格別の味わいでした。東京にいると、どこのレストランがおいしいとか常に流行を追いかけてしまいますが、ここにはすぐそこに『ホンモノ』があると感じます」(賀川さん)

(編集部・石臥薫子、澤田晃宏、福井洋平)

AERA 2017年5月15日号

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