この人の歌と笑顔と変顔に、どれだけの親子が救われてきただろう。NHKの幼児番組「おかあさんといっしょ」で11代目うたのお兄さんを9年間務めた横山だいすけさんは、幼いころからの夢とどう向き合ってきたのか。全国各地、海外からも届いた質問をもとにAERA編集部が聞いた。
* * *
――歌が好きになったきっかけは何だったのでしょうか。
3、4歳のころに「青きドナウ」というウィーン少年合唱団の子どもたちの生活を描いた映画を観たのが歌との出合いで、そのころから歌うのが好きだった記憶があります。「どうやったら僕はウィーン少年合唱団に入れるの?」と聞いていたと、親が言っていました。
――小学3年生から大学まで合唱団で活動を続け、うたのお兄さんになるという夢をかなえました。幼いころに音楽やスポーツを習っている子は多くいますが、情熱を保っていく秘訣(ひけつ)や家族がどう関わっていたかを教えてください。
父親は「やりたいことをやりなさい」と応援してくれていて、母親が音楽を好きだったんですよ。「青きドナウ」を見せてくれたのも、ディズニーの音楽をいっぱい聞かせてくれ、一時期はエレクトーンやピアノを習わせてくれたのも母親でした。当時は楽しくない瞬間もあったと思うんですが、思い出として残っているのは楽しいことばかり。親が楽しい思い出をつくることを大切にしてくれたというのが大きいのかなと思いますね。
でも僕はもともと歌がうまいとか、秀でていたわけではなかったんです。音楽の成績は「楽しく歌っているね」という温情で評価してもらえましたが、独唱は別の子だったし、大学時代に応募したコンクールも予選落ち(笑)。特別なものは何もなくて、本当に好きっていう気持ちだけが続いていた。それを周りの人が支えてくれました。
――例えば、どんな支えがあったのでしょうか。
僕が高校1年生のときに「歌が好きだ」と言ったら、ピアノの先生が音楽大学があることを教えてくれて、国立音楽大学の夏期講習に参加しました。そこで副科で受けたピアノの先生が近所に住んでいて、「君、歌好きなの? じゃあ、僕合唱団持っているからおいでよ」って声をかけてもらい、アマチュア合唱団で歌を学ばせてもらった。