「安倍首相ガンバレ」を叫ぶ子どもたち、教育勅語を朗唱させる幼稚園……。森友学園問題に端を発して「右翼」という人たちが、にわかにクローズアップされている。AERA 2017年5月1-8日号では「右傾化する日本」を大特集。「右翼」って何?「保守」とどう違う? 素朴な疑問に答える。
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「クールジャパン商材コンセプトブック『世界が驚くニッポン!』」で物議を醸した経済産業省。「あなたは日本がこんなにも注目されていることを知っていますか?」という問いにはじまり、虫の音を雑音と捉える外国人に対し日本人は声として聞くなど、64ページ全般にわたり壮大な「日本スゴイ」が繰り広げられる。
「経産省には『ダメな民間に代わって、Japan as No.1と言われた日本製造業を復活させてやる』といううぬぼれ介入派官僚が多い。元来パフォーマンスも大好きな彼らが安倍総理の意向を忖度したら……まぁ、こうなるでしょうね」
そう語るのは元経産官僚の古賀茂明氏だ。
経産省による国策としての「クールジャパン」戦略が始まったのは2006年。近現代史研究家の辻田真佐憲氏は言う。
「文化というのは経済や軍事に比べて国力、つまり予算がかからない。没落しつつある国家ほど、文化で勝負しがちです」
「クールジャパン」はイギリスの「クールブリタニア」にヒントを得ている。これはイギリスの愛国歌、「ルールブリタニア」をもじった言葉。いわば「愛国」をパロディーにしたわけだが、日本の場合はどうだろうか?
「おたくカルチャーと公権力がかなりクロスしているのが最近の傾向です」(辻田さん)
公権力は効果的な宣伝のため、サブカルチャーを利用する。クールジャパン戦略は、それまで日陰者だったおたくカルチャーを「日本が誇る文化」として社会的に認知させた。
●国策に近寄ると沈む?
編集者の早川タダノリさんはこう言う。
「クールジャパンというのは、海外に日本の文化を売り込むと同時に、日本にはこんなに世界に誇れるものがあるという内向きのプレゼンテーションでもあると思います」