逆に、彼らの作品で存在感を強めているのは女性たちだ。

「詩人のルイ・アラゴンが言う通り『女性は、男性の未来』ですから(笑)。今日では社会のなかで闘う女性たちがより存在感を増している。社会のなかで何かが変わろうとするときは、必ず強い女性が現れる。われわれ芸術家は、時代を反映するものですから」(リュック)

●どんな時代にも優しさ

 映画を1本撮り終わると、2人は町中を歩き、人々に会い、さまざまな建物や場所を見に行く。そうやって得たインスピレーションをもとに再び物語を作り上げる。「午後8時の訪問者」で描かれる、患者の家族たちがジェニーにパネトーネやワッフルを贈ろうとするシーンは、兄弟が実際に耳にしたエピソードだ。そしてこうした人々の優しさが、作品に軽やかさをもたらしている。

 口数が多いのはリュックだが、2人は常にうなずき合いながら話す。口調は穏やか。社会に向ける目は鋭いが、怒りをぶつけるために映画を撮っているわけではないことは、作品を見ればわかる。

 自分がどんな時代に生きているのかを知ること。そして、どんな時代にも優しさはあること。それが、誰にもまねできない「ダルデンヌ的」なるものを醸し出す源なのだ。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2017年4月17日号

[AERA最新号はこちら]