世界が閉じた方向に進むいま、彼女の評価が高まるのは必然だと杉野さん。ヤスミン監督が残した長編6作品でおすすめは?

「難しい!『細い目』と『タレンタイム』は同じくらい好き。『ラブン』『細い目』『グブラ』には同じヒロインが登場するので、やはり制作年順に見て最後に『タレンタイム』でどかんと泣く!のがおすすめかな」

●寅さんと無印が大好き

 杉野さんは、ヤスミン監督との出会いで女優業からプロデュース、監督業にまで活動を広げることになった。

「常に『彼女に対して恥ずかしくないか』という思いがありますね。私の最新作『雪女』も実はヤスミンの影響が大きいんです。人間や世界は揺るぎあるもので実体も境目もない、がテーマ。アプローチは違っても伝えようとしていることは同じだと思っています」

 ゴダールよりもトリュフォーが、松尾芭蕉よりも小林一茶が好きだったというヤスミン監督。

「“人情”に惹かれるんでしょうね。すごく共感できます。山田洋次監督の『男はつらいよ』も好きで、来日中に寅さんのトランクケース型のDVDボックスをゲットしようとみんなで探し回ったことも(笑)。小津安二郎監督のお墓参りにも一緒に行きました。それにヤスミンは、無印良品が大好きだったんですよ。白のシンプルな服をよく着ていました」

 いまヤスミン監督が求められる理由が、わかったような。(ライター・中村千晶)

AERA 2017年4月3日号

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